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セラミックインレー
インレーとは
そもそも「インレー」ってなんだろうと思われる患者さんが非常に多いと思います。「インレー」とは、歯の部分的な虫歯などを治す治療方法となります。
良く「インレー」と「クラウン」の違いが分からないとおっしゃる患者さんがいますので、説明しますと「クラウン」は、全部被せる治療方法つまり歯全体を修復物で覆い被せる方法で歯は見えません。「インレー」は、部分的に治す方法となります。写真は、「メタル(銀歯)インレー」と呼ばれ、金属で部分的に治す方法となります。いずれにしても歯の部分的な治療で、詰め物をする方法で治療の形態的分類で「インレー」と呼びます。治療に使用する材質による分類ではありません。
セラミックインレーについて動画で解説
※動画
インレーとは何か、インレー形態に使用される材質について、保険・自費の治療の違い等を詳しくご説明した動画です。
セラミックインレーの種類と特徴
ハイブリッドセラミックインレー
ハイブリッドセラミックインレーのハイブリッドとは、セラミックとプラスティックの合いの子になります。
もっと詳しく伝えるとプラスチックの中にセラミックのパウダーを混ぜ合わせた材料を用いて製作したインレーで強度的にも材料的にもプラスチックになります。どこにもプラスチックという名称はないのですが、ほぼプラスチックです。
ジルコニアセラミックインレー
ジルコニアは、皆さんもご存知な方が最近増えてきていると思いますが、白い金属とも呼ばれています。キュービックジルコニアとも呼ばれアクセサリーなどでも有名だと思います。輝きや硬さをダイヤモンドに似せた人工宝石で人工ダイヤモンドとは少し違います。ジルコニアは、酸化ジルコニウム修復物を指しており、非常に強度の高いセラミックとなります。非常に硬いので、現在までは細かい加工が難しく削り出すことができませんでしたが、技術の進歩と共に細かい部分まで削り出すことが可能となりました。
セラミックインレー
セラミック材質のインレーになります。e-maxインレーは、e-maxというブランド名で一般に二ケイ酸リチュウムと呼ばれる素材を使用しています。見た目が非常に良いですので、前歯のかぶせ物でも使用されることが多いです。また、奥歯でもインレーとしても使用されますが、強度がジルコニアセラミックに比べると劣る部分がありますので、患者さんのかみ合わせの強さにより選択されない事もあります。例えばレクサスはトヨタ自動車が展開するブランドですね。各社から車は販売されていますね。e-max(イーマックス)はイボクラール・ビバデント社が展開するブランドです。各社からもセラミックが販売されています。
よくいただく質問で、e-maxとジルコニアどちらがいいですか?
例えばトヨタ自動車がレクサスというブランドで、SUVやオープンカーや普通車等を販売していますね。イボクラール・ビバデント社がe-max(イーマックス)というブランドで、セラミックインレーやセラミッククラウンやジルコニア等が販売されています。つまり、e-maxとジルコニアどちらがいいですか?という質問はレクサスと車はどちらがいいですか?という質問と同じ意味合いになります。
セラミックインレーメリット・デメリット
メリット
1. 金属アレルギーない金属を使用していないので、アレルギーの心配がありません。
2. 見た目が良い見た目が銀歯に比べて圧倒的に良いです。お口を開けて下顎や上顎の4番目の歯は、メタルインレーを選択すると横から銀歯が覗いたりすることになります。
3.ハイブリッドセラミックインレーは、プラスチックなので、擦り減ったり変色することが多々あります。
4. 歯肉の変色ない金属を使用しないので金属イオンの流失が起こらないため歯茎の変色が起こりにくいです。
5. 汚れがつきにくいセラミックは、汚れが付きにくいために、歯を削った後の詰め物で歯肉が腫れたりすることが少ないです。
6. 銀歯に比べて寿命が長いという報告もあります。簡単に言えば、虫歯になりにくいというメリットがあります。理由は、精度と使用するセメントが外に溶け出しにくいという特徴があります。
デメリット
1.割れることがある セラミック=陶材、お茶碗ですので、強い衝撃に弱く割れることがあります。しかし、セラミックの中でもジルコニアは、硬さがあり、割れることが少ないです。
2. 保険適応の修復物は3割負担で安価で済みます。また、そもそも保険治療で設定された価格は、セラミックインレーの1/10程度の値段となります。保険治療の金額は国により設定された全国統一金額で保険掛け金や税金で補てんされており、実際の金属代や経費が反映された金額ではありません。
セラミックインレー寿命
ハイブリッドセラミックインレーの寿命
プラスティックとセラミックパウダーのハイブリッドになります。天然歯の硬さは、約400MPaに対して、ハイブリッドインレーの硬さは、270MPaですので、天然の歯に比べて強度で劣ります。しかし、粘り強さがあります。やはりプラスティックを使用していますので、着色がしやすく見た目の寿命は、早く来ると考えて良いと思います。
ハイブリッドセラミックインレーの寿命は、約7年くらいと報告されています。(メインテナンス頻度やマウスピース使用頻度やお口の中の衛生状態により変化します。)
ジルコニアセラミックインレーの寿命
ジルコニアインレーは、非常に硬い材料となります。硬さは、1000〜1500MPaと言われ、少し硬すぎるのではないかと言われています。天然歯の硬さは、400MPaですので数字で見ても硬いということが理解できると思います。
非常に硬いジルコニアインレーは、割れたり削れたりする事が少ないです。その代わり、対合する歯を削ってしまうこともあるくらいです。そのためジルコニア自体の寿命は、半永久的に持つと言われていますが、ジルコニアを支える歯や噛みあう歯の寿命があり、約10年くらいと言われています。 (メインテナンス頻度やマウスピース使用頻度やお口の中の衛生状態により変化します。)
e-maxセラミックインレーの寿命
e-maxセラミックインレーは、非常に見た目が良く、見える範囲において用いられることが多いです。例えば下顎のインレーで使用されることが多いです。硬さは、400MPaですのでほぼ天然歯と同じ硬さになります。
臨床の中でやはり歯ぎしり・食いしばりが強い患者さんに用いるとほぼ割れてきますので注意が必要となります。寿命は、平均10年くらいと言われています。 (メインテナンス頻度やマウスピース使用頻度やお口の中の衛生状態により変化します。)
セラミックインレーを長く保つには?
日本人の70%以上が歯ぎしりを経験した事があり、コロナによるストレスにより現在は、もっと増えていることが予想されます。そしてご存じない方も多いのですが私たち人間は100%歯軋りを100%しています。
セラミックの特徴として、衝撃に弱い点が挙げられます。グッと食いしばったり歯軋りの衝撃によりセラミックが割れてしまったり、セメントが外れてしまったりを防ぐには、ナイトガードというマウスピースの就寝時装着がとても重要となります。
ジルコニアインレーは、非常に硬い材質なのでナイトガードの装着をしなくても大丈夫だろう?と思われる患者さんもいらっしゃいますが、ジルコニアインレーも毎日の歯ぎしりで疲労が起こり、マイクロクラックが入ることで割れてしまいますのでご注意ください。
セラミックインレーを守る事だけではなく、ナイトガードは、虫歯や歯周病や顎関節症を予防することもできますので、多くの患者さんに私は、ナイトガードの装着を勧めています。
セラミックインレーは虫歯になるのか?
セラミックインレーは、保険の銀歯に比べると虫歯になりにくいという特徴があります。セラミックインレーに用いるセメントは、保険診療で多く使用される接着材ではすぐに外れてしまうので、レジンセメントと呼ばれる特殊な接着材を特殊処理後に使用します。この接着材であるセメントが唾液に46時中唾液にさらされていても約10年は持つと言われていますので、虫歯になりにくい状態が続きます。
なので虫歯にならない訳ではありませんが、なりにくい状態が続くのがセラミックインレーの特徴になります。また、ジルコニアインレーやe-maxセラミックインレーは、そもそも汚れがつきにくい材料となりますので、研摩さえしっかりと行われていれば、細菌を含む汚れも付着しにくく外れやすいので、その分虫歯にならないことも確かです。
インレーの虫歯の多くは、どちらかというと材料やセメントの問題が大きく、メインテナンスに定期的に通い日々の歯ブラシをしっかりと行い、ナイトガードを装着して就寝することを繰り返せば虫歯になる時期を遅らせられる、つまりは歯の寿命を延命できると報告されています。
セラミックインレーのよく頂くご相談
1. 歯ぎしりが強く割れてしまった
夜間の歯ぎしりが強い方は、約100~200kgの力が歯に加わりますので、ハイブリッドセラミックインレーやe-maxセラミックインレーでは太刀打ちできない場合が多々あります。そのため、選択するのはジルコニアセラミックインレーもしくは金属となります。
2. 歯の色と同じ色にしたい
歯の色と同じ色味を出すには、単色のジルコニアセラミックインレーでは、難しくなります。ハイブリッドセラミックインレーは、色味を合わせることは可能ですが、天然歯の透明感を表現することは、難しいですので、最終的な選択は、セラミックインレーとなります。
3. 歯をあまり削りたくない
歯はできる限り削りたくないのは患者様だけでなく歯科医師も同じです。歯科医師側も可能な限り歯を削らず治療を進めています。しかし、虫歯が深ければ深い程歯を削らならければならないのが事実です。なので、歯をどれくらい削る必要があるかを評価したいと思います。ハイブリッドセラミックインレーは、強度が弱いので比較的多めに歯を削って厚みを持たせる必要があります。それで考えると1番強度のあるジルコニアセラミックインレーは、削る量が必然と少なくできます。
4. 費用をかけず歯を白くたい
できるだけ費用をかけず銀歯を白くしたいとおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。そのような場合は、ハイブリッドセラミックインレーを数本まで選択することになります。値段が安いセラミックインレーは、ハイブリッドですが、やはり歯ぎしりや食いしばりには、弱いですので、ナイトガードを就寝中に装着することが必須となります。多くの歯をハイブリッドセラミックインレーにしてしまうと簡単に短期間に擦り減って深刻な噛み合わせ問題が起こってきます。
セラミックインレーの比較
セラミックインレーの特徴
1. 銀歯を白い歯に変えたい
誰しもが口を開いて大きな声で笑った際に、銀歯がキラッと光るよりも綺麗な白い歯に憧れると思います。そのため、銀歯を綺麗な白い歯に変えたいとおっしゃる患者さんは、多くいらっしゃいます。では、どのような材料を選択するかとなりますが、やはり1番天然の歯に近い材質は、e-maxセラミックインレーとなります。
2. 歯ぎしりに強いセラミックインレー
全員歯ぎしりをしていると言われています。そのため、多くの患者さんが大人になって歯ぎしりで歯と歯の間が擦れて虫歯になるケースが散見しています。そのような場合は、強度を要するジルコニアセラミックインレーを選択する必要があります。
やはりジルコニアセラミックインレーは、硬い材質なので割れにくいというメリットがあります。強い力が加わった場合は、歯が割れてくるという可能性もあります。やはり、歯ぎしり食いしばりには、ジルコニアセラミックインレーとマウスピースをセットでの使用が第一選択となります。
セラミックインレー保険適用
保険で白くできないか?という質問を多くの患者さんから頂きます。保険の場合、小臼歯・大臼歯の奥歯に関して、噛む面だけを限定的にCR(コンポジットレジン)プラスティックを用いて治療されることは多くあります(写真参照)が、多くの方は、噛む面ではなく歯と歯の間の虫歯になります。そうなるとCR(コンポジットレジン)プラスチックでは、割れる欠けるが多発しますので、保険で治療することは行わないことが多いです。
また、クラウンと呼ばれるかぶせ物となると保険でも白いCADCAM冠が認可されておりますが、歯種が限定されたり、部位が限定されたりしますので、全体の治療計画が必要です。
セラミックインレーQ&A
セラミックインレーをした後に冷たいものがしみるのはなぜ?
セラミックインレーにする場合、大なり小なり歯を削ります。削るということは、歯の神経に近くなりますので、しみやすくなることがあります。通常は、2から6カ月でしみなくなってきますが、生活に支障が出るような場合は、神経の治療をした方が良いこともありますのであまりにもしみる場合には受診されて下さい。
銀歯を外したら神経の治療が必要と言われたのはどうして?
銀歯を外す際などレントゲンを撮影したりしますが、銀歯の中は金属でおおわれていますので白く写ってしまい、虫歯かどうかを判断できない場合が多々あります。そのため、銀歯を外してみたら虫歯が中で進行していたということがあります。虫歯を除去していったら神経に達していたという事もあります。その場合、歯の神経の治療が必要になることもあります。